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JR西日本歴代社長に無罪判決

JR西日本歴代社長に無罪判決

尼崎電車脱線事故に関して、JR西日本の元社長3名に対して、無罪判決が言い渡されました。すでに検察が起訴した社長1人に対しても、昨年1月に無罪が確定しています。

今回は、歴代の社長3名についての業務上過失致死傷罪で、検察官が起訴できないとして不起訴にした事案を検察審査会が起訴の議決をして、指定弁護士が起訴したものです。

昨年に事故当時の社長が無罪になり、検察官が控訴しなかった(できなかった)時点で今回の3人についても、先に無罪となった社長以上に事故とは遠い存在でしたから無罪判決が出ることはある意味当然予想されたものでした。

この判決をキーワード的にまとめますと、1 強制起訴された事案であること 2 歴代の社長が起訴されたこと 3 過失事件であること 4 結果的に、運転士は死亡し、誰も刑事責任を問われる人がいなくなっていること があげられます。

1については、以前小沢代表が無罪になった時にブログで書きましたが、強制起訴の前提として、市民感覚と言えは聞こえは良いのですがやはり専門家ではない人の検察審査会に問題があると思います。専門家がすべて良いというのではありませんが、専門家があらゆることを考えた末の結論とは重みがあるものと言えます。

3について、取り分け過失事案と言うのは、簡単そうに見えますが専門家にもかなり難しいものがあります。検察官が起訴したなかでも過失事案の無罪判決は多いのです。

最近の著名事件では、たとえばイージス艦あたご衝突事件の無罪事件(1.2審とも無罪)、明石花火大会歩道橋における雑踏事故についての明石署副署長の免訴(共犯が成り立たないため起訴時に時効、実質的には過失を否定した無罪)判決事件があります。あたご事故当時のマスコミは、あたご側の不注意と決めつけた報道をし自衛隊を攻め立てました。明石の事故でも、警察の警備が悪いから陣頭指揮者も悪いとして起訴されていましたが、結局無罪でした。

それほど過失事件、過失の認定と言うのは難しいものなのです。

今回の件に戻りますと、2の人選では、歴代の社長が選ばれたのもそもそも不可解で、本来ならば、事故同時の安全管理、整備関係者が選ばれるのではないかと思いますが、その中から誰も選ばれていないことは、すでに不注意な運転以外に問題点は見つからなかったと考えられます。

それを何段階も超えて歴代社長が悪いという人選(告訴した人の問題ではありますが)からも極めて素人的に見えてしまいます。

また、過失の内容でも、ATSを設置していれば電車のスピード制御ができるので事故はなかった、それを設置しなかった歴代社長は悪いというものです、その通りかもしれません。

しかし、それだけが事故を防ぐ手段ではなく、運転士の技術にもよるものがあるので、今回の脱線事故まで指定された速度で走行していれば事故はありませんでした、やはり、今回の事故の原因は運転士の過失によるもので、それ以外のレールのブレとかカーブのきつさとかの直接原因はみつけにくかったものと思います。

ATS設置義務の論法でいきますと、最近追突防止装置が備わった自動車が多数販売されています、だから、タクシー会社社長は、全部のタクシーにこの新装置をつけない以上タクシーの追突事故が起きた場合すべてに刑事責任が及ぶことになりそうです。つまり、新装置をつけた方がいいのですが、法律的な義務ではないのです。もっと言えば、これからは、新装置をつけていない自動車で追突死亡事故を起こした運転手たちは重過失ありとされたり殺人とされたりしたら困ります。

検察審査会制度を見直して、今回の強制起訴になったプロセスを検証すべきだ等話も出てきますが、そういう複雑なことではないと思います。つまり、過失事案と言うものの理解が難しく、素人の人(前記の他の無罪事件のとおりプロでもわからない)では過失の考え方がわからないのですから、それを検証して間違いだったと言ってもくじで選ばれてきた審査員がかわいそうです。

イタリアでは、科学者が地震の発生を予知できず外したとして起訴され、しかも裁判所で有罪判決が出たという報道がありました。間違った判断をして、大勢の人が死んだのは事実ですが、日本では過失責任を問われることはありません。東電の福島原発事故でも誰も刑事責任を問われていないのですから。

投稿者 ふりはた綜合法律事務所 | 2013年9月30日 11:18

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